2018年05月20日

【映画の感想】『 孤狼の血 』






評価:★★★☆☆ こういうのもっとやって!




みんな大好き立川シネマシティにて、白石和彌監督、役所広司主演のヤクザ映画『 孤狼の血 』を観てきた。

(まだ日活ニューアクションの時代の感想を全部書いてないのに……。)


原作は柚月裕子の同名小説。


記憶を頼りに、新作でもお構いなく おおまかなストーリーを書いていきつつ、その都度感想を書いていくので、ネタバレが嫌な人はご遠慮ください





昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島・呉原で、地元の暴力団である尾谷組と、新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の加古村組の抗争がくすぶり始めていた。
呉原東署に配属になったエリート新人刑事の 日岡秀一(松坂桃李) は、凄腕だが目に余る行動の多いベテラン刑事の 大上章吾(役所広司) と組んで捜査にあたることに。
尾谷組とズブズブの関係にある大上は、加古村組を潰す糸口として、同組関連の金融会社社員の失踪事件に目をつける。


【カチハヤ】
 気合が入っているのがひと目で分かる! こんな役所広司は『 シャブ極道 』以来。松坂桃李が取調室にかき氷を持っていったときは、「まさかシャブをかけて食う気? 刑事なのに」と思った。






大上は日岡に “ 度胸試し ” と称して、加古村組の通称「関取」に喧嘩を売らせる。日岡をボコボコにした関取に懲役をちらつかせて情報を得ようとするも拒否したことから、大上はこの事件の裏に何か重大なものが隠れていると確信する。
大上は怪我をした日岡を行きつけの薬局に連れて行き、薬剤師の 岡田桃子(阿部純子) に治療させる。
桃子は暴力的な夫と離婚したばかりだった。
その後、偶然再会した日岡と桃子は惹かれ合い恋人関係に。


【カチハヤ】
 コインランドリーで日岡と再会したときの桃子役の阿部純子が出色。Tシャツとショートパンツに、銭湯帰りと思しき洗い髪から、ギリギリ露悪的にならない普段着のエロさを感じる。



尾谷組のシマにあるクラブ梨子に加古村組組長の 加古村猛(嶋田久作) と、その親組織である五十子会会長の 五十子正平(石橋蓮司) がやってくる。
偶然居合わせた尾谷組の若頭である 一之瀬守孝(江口洋介) は苛立つが、大上は戦争を回避すべく「手を出したら向こうの思う壺じゃ」と彼をなだめる。


【カチハヤ】
 クラブ梨子のママを 真木よう子 が演じている。ぴったりなキャスティングに思えたが、思ったほどしっくりきていない。それと、ホステスを横に抱きながら酒を飲むシーンには映画全体を通してリアリティが感じられず、“ 演じている感 ” がつきまとう。それは「役者が普段からそういう飲み方をする時代じゃないから」ではなく、キャスティングのミスではないだろうか。例えば本作には出ていないが、菅田俊なら上手く演じてくれそう。






五十子会と繋がりのある地元右翼団体代表の 瀧井銀次(ピエール瀧) から、とある連れ込み旅館が金融会社社員の失踪と関係があるとの情報を得て大上と日岡は事情を聞きに向かうが、ガードが固くなかなか話してくれない。
一計を案じた大上は、日岡が止めるのも聞かず、旅館の裏手に放火でボヤを出し、その混乱に乗じて監視カメラのビデオを入手する。
ビデオには加古村組組員が金融会社社員を無理やり連れて行く映像が残っており、呉原東署は失踪事件と加古村組との関連を確信する。


【カチハヤ】
 刑事のくせに放火する、という展開は良いのだが、燃えている火のCGがちゃちなのはどうにかして欲しかった。街中で火を燃やせないのはわかるが、昭和63年が舞台の映画を観ながらそういう現代の事情を考慮しなきゃならんのは疲れる。



日岡は広島県警の警視で監察官である 嵯峨大輔(滝藤賢一) に大上のこれまでの逸脱行動や暴力団との癒着を報告する。日岡は嵯峨が大上を調べさせるために送り込んだスパイだったのだ。
大上は十四年前にヤクザを殺したのではないかという嫌疑もあり、彼を逮捕すべきと主張する日岡に嵯峨は、もう少し探って彼が行動の詳細を記録している日記を手に入れるよう命じる。


【カチハヤ】
 こういう役が必要なとき、滝藤賢一の顔は役に立つ。そういう顔をしている。



クラブ梨子のママの恋人である尾谷組組員の柳田孝は、彼女にしつこく言い寄ってくる加古村組の組員に腹を立て、彼を殺りにいくが返り討ちに合ってしまう。
同じ頃、尾谷組の若手組員が加古村組の事務所に銃弾を撃ち込み、偶然現場に居合わせた日岡に逮捕される。
組員を殺された上に、味方と思っていた大上の部下に若手組員を逮捕された尾谷組若頭の一ノ瀬はもう戦争しかないと息巻く。
大上は加古村組の親組織である五十子会会長の五十子に和解を提案するが、五十子は一ノ瀬の破門を条件のひとつとして譲らない。組長が懲役で留守の今、尾谷組は一ノ瀬なしでは成り立たないため、それは事実上の和解拒否であった。
大上は懲役中である尾谷組組長の 尾谷憲次(伊吹吾郎) を訪ねて一ノ瀬の説得を懇願、一ノ瀬は大上に三日の猶予を与え、それまでに加古村組を追い詰められなかったら戦争になる、と警告する。


【カチハヤ】
 どうも江口洋介演じる一ノ瀬に迫力が足りない。良い役者だが、決して演技力が高いわけではないし、彼の持っているある種の “ 軽さ ” が良い方向に働くこともあるが、ここでは逆効果だった。同じ映画(『 湘南爆走族 』)で出てきたからというわけでもないのだが、織田裕二も似たタイプの “ 軽さ ” を持った役者で、それは役を選んでしまうところがあるかもしれない。



三日の猶予はあまりに短く、尻に火がついた大上は、恋人を殺されていきり立つクラブ梨子のママに美人局を仕組ませ、彼女に言い寄っていた加古村組組員を罠にはめる。
その組員を拷問して聞き出した情報を下に大上ら呉原東署の面々は、無人島で金融会社社員の死体を発見する。


【カチハヤ】
 拷問シーン。ここ、見せ場。ヤクザ映画もいろいろ観てきたが、局部に埋めた真珠を切って取り出す、という拷問は初めて。ドスやナイフではなく、ちゃんと医療用のメスを使っているあたりに幾ばくかの良心を感じる。良い子は真似しないように。



死体を発見して意気揚々と帰ってきた大上だが、高坂隆文(中村獅童) という新聞記者が彼と十四年前のヤクザ殺しの関連について調べており、署長は彼を捜査から外し、事情を聞くため署にカンヅメにしてしまう。
日岡は一ノ瀬に事情を話しに行くが聞いてもらえず、遂にタイムリミットは過ぎ、二つの組は抗争状態に。
抗争の火が点いた上に、頼みの大上が行方不明で呉原東署は手をこまねくばかり。
日岡は大上への不信感を募らせるが、右翼団体代表の瀧井は「大上さんにとってヤクザは道具にすぎない。あの人の頭にあるのはカタギのことだけ。そのためならヤクザなんて平気で裏切る」と話す。
クラブ梨子のママは、日岡に十四年前のヤクザ殺しの犯人は自分だと告白する。夫を殺された復讐にヤクザを殺したが、お腹の子のことを不憫に思った大上が、ヤクザ同士の抗争に見せかけてくれたのだという。
そしてママは日岡に大上から預かっていたというノートを渡す。警察上層部の汚職の証拠が記されたそのノートは、大上がヤクザと警察との間の綱渡りをする上での命綱であり、監察官嵯峨が日岡を使って手に入れようとしていた物だった。
翌日、大上の水死体が見つかる。


【カチハヤ】
 大衆の道徳感情の琴線に触れることを怖れる昨今、結局主人公はイイ人になってしまうのか。考えてみたら大上は「自分はヤクザと警察の間を綱渡りしている」とはいっていたものの、ヤクザ映画の悪徳刑事の系譜でいうと大して悪いことをしていない。役所広司の演技の力の入り様には敬意を表するが、大上というキャラクターの掘り下げが足りていない。これが本当の役不足というものだろう。



日岡は瀧井に自分の決意を話し、二人は結託して大きな勝負に出る。
瀧井は繋がりを利用して五十子会の懇親会に出席。五十子がトイレに入ったところで、日岡が一ノ瀬らを会場に招き入れる。一ノ瀬は五十子を殺し、警察が駆けつけると子分に自首させる。
ところが日岡は一ノ瀬との約束を破り、子分ではなく彼を殺人罪で逮捕する。日岡に謀られたと知って逆上する一ノ瀬だが時すでに遅し。二つの組は一夜にして力を失った。


【カチハヤ】
 この計画は面白い。だが、結局日岡も大して悪いことをしていないという点では面白くない。日岡は大上の意を継いだわけだから、少なくとも先代に輪をかけた逸脱行為をしなきゃいけないはず。
あと、懇親会の会場で銃を乱射するシーンは『 アウトレイジ 最終章 』にもあった。撮影時期の問題もあるだろうからカブったのは別にいいのだが、本作の方が見た目がスケールダウンしている点はいけない。
それとトイレで五十子を殺すシーンも血しぶきが飛んでいてそれなりに派手ではあるのだが、緊迫感や狭さからくる圧迫感などはどうしても北野映画に見劣りしてしまう。映画の出来は決して悪くないのに、似たようなシーンが他の映画にあるだけに、ちょっと物足りないところが気になってしまう。



【 総評 】 ルビッチ以外の恋愛映画をほとんど観ない僕にとって、日本映画では観るものがない時代が長かった。
バイオレンス描写のある映画が見たい場合は、70年前後のヤクザ映画や、韓国映画に頼るしかなかった。
その状況がここ数年改善されてきて、嬉しい限り。本作は『 県警対組織暴力 』っぽかったり、『 その男、凶暴につき 』っぽいところもあったりで、そういうタイプの映画を復活させるぞー!という強い意気込みを感じた。
評価が★★★☆☆なのでイマイチなんじゃないかと思ってしまう人もいそうだが、僕の評価で★★★☆☆は「満足」「観に行って良かった」という意味なので、そこのところはわかっていただきたい。



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posted by カチハヤ at 20:02| Comment(0) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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