2017年08月24日

【雑考】 映画のMVPを探そう ーー『 ジョン・ウィック 』編






映画のMVPとは何か?


「この映画のMVPって◯◯だよね」

これは『 ジョン・ウィック 』について話していたときの友人の発言だ。

最初は何のことかわからなかったが、説明されて膝を打った。

ここでいう“ 映画のMVP ”とは、シナリオ上もっとも役に立っている登場人物のことだ。

その登場人物のお陰で、説明が省けたり、時間が短縮できたり、描きたくないシーンを描かなくて済んだりする。

一見するとそれほど重要な役割には見えないが、作品全体を構成する上で多大な貢献をしている登場人物が確かにいるのだ。

シナリオを学んでいる者の端くれとして、そういう登場人物を探し出して讃えようと思う。

『 ジョン・ウィック 』において多大な貢献をした“ 映画のMVP ”はーー


ジョン・レグイザモ演じる、盗難車を解体する店のオーナーの オーレリオ !!!


では、なぜ彼が映画のMVPなのかを解説しよう。




もしも、オーレリオがいなかったら


一番手っ取り早いのは彼がいなかったら映画の進行がどうなっていたか考えることだ。

彼のやったことといえばーー


@ 自分の店にジョン・ウィックの車を持ち込んだヨセフ・タラソフを殴った。

A ジョン・ウィックに車を持ち込んだのがヨセフ・タラソフだと教えた。

B ヨセフの父親でマフィアのボスであるヴィゴに、彼の息子がジョン・ウィックの車を盗んで飼い犬を殺したことを教えた。



この映画を鑑賞した人ならおそらくこの3点くらいは覚えていることだろう。

では、もしこの3つがなかったらシナリオ上にどのような齟齬が生じていただろうか。

@は調子に乗って悪事をはたらくヨセフを大人が叱りつけたという意味で観ていて胸がすく場面だ。

オーレリオの職業意識やジョンに対する仲間意識も垣間見えるということで、意味のあるシーンではあるけれども、映画のMVPを決めるという意味ではさほどではない。

重要なのはAとBである。

これによって何が変わったのか。

もし、AとBがなかったらどうだろう。

ジョンは自分を襲い、飼い犬を殺し、車を奪った犯人を探さなければならない。

記憶や物証を手がかりに歩き回り、探偵のように犯人を探す。

ヴィゴはまだジョンが報復に打って出たことを知らないため、襲われることはい。

アクションといえば、たまに非協力的な者を殴り飛ばす程度だろう。

最初からハイテンションの銃撃戦が行われていた本編とはえらい違いだ。

本作の上映時間は101分だが、オーレリオ不在で探偵パートを描かなければならないとしたら、映画の尺は2割も、3割も増えていただろう。


一方、ヴィゴ・タラソフはどうか。

彼は息子のしでかしたことを知らない。

それに気づくのは、(ヨセフがジョージ・ワシントンよろしく、父親に正直に話した場合を除き)ジョンが派手に暴れだしてからだ。

場合によっては、ヴィゴが起きてしまったその事実を知る前、ヨセフが全くボディーガードをつけない状態であっけなくジョン・ウィックの“ 魔の手 ”にかかってしまうことだってあり得る。

もちろん、それでも展開として無理はないが、僕らが楽しく観た『 ジョン・ウィック 』のひたすらハイテンションのアクションシーンが連続するような爽快さは失われ、似たストーリーの映画として挙げられることがあるリーアム・ニーソン主演の『 ラン・オールナイト 』のような良質な小品の枠に収まってしまっていたかもしれない。

つまり、オーレリオの存在が本作のスタイルを規定する柱のひとつになっており、この柱が欠けては『 ジョン・ウィック 』という映画は成立しえないのだ。


さて、オーレリオの功績を整理してみよう。


1,上映時間を節約できた。

2,不必要な場面をカットすることで作品のスタイル確立に一役買った。



物語上では地味な存在だが、その貢献度は大きい。

サッカーに例えるなら、決勝点を挙げたストライカーではなく、中盤の底でひたすら相手のボールを狩り続けたボランチといえるだろう。

これがオーレリオが本作のMVPである理由である。

好きな映画があったら「もしも、その登場人物がいなかったら」と考えてみよう。

そうすることで、その映画の陰の功労者の存在が浮かび上がってくるかもしれない。


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posted by カチハヤ at 18:28| Comment(0) | 雑考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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