2019年01月16日

【映画の感想】 勝新×田村高廣の兵隊やくざ 『 続 兵隊やくざ 』







評価:★★★☆☆ 二人のイチャイチャがもっと見たい

(※ 評価の見方 …… ★1 最低、★2 いまいち、★3 満足、★4傑作、★5 最高)



昨年の12月27日から始まった、ラピュタ阿佐ヶ谷モーニングショー企画『 勝新×田村高廣の兵隊やくざ 』




この企画は、毎日10時30分からの上映12月31日と1月1日は休館)で一週間ごとに上映作品が入れ替わる


第二週目に上映されるのは、シリーズ第二作目である『 続 兵隊やくざ 』


日曜だったこともあって初日(1月6日)に鑑賞することができた。


例によって記憶を頼りにおおまかなストーリーを書きつつ、その都度感想を添えていくので、ネタバレが嫌な人はご遠慮ください





『 続 兵隊やくざ 』
 監督:田中徳三
 脚本:舟橋和郎
 原作:有馬頼義 『 貴三郎一代 』
( Movie Walker より )




前作のラストで機関車を分補り、満州の雪の曠野を突走っていた大宮貴三郎一等兵(勝新太郎)有田上等兵(田村高廣)だが、途中ゲリラの仕掛けた地雷でふっとばされ、陸軍病院で目を覚ます。美しい看護婦、緒方恭子(小山明子)の看病は、二人にとって天国であった。だがやがて二人は北支の最前線にある独立守備隊へ逆もどりとなる。


【カチハヤ】
 病院における大宮と有田の掛け合いは面白かった。ただ、「僕が観たかったものとは微妙に違うような……」という違和感もあった。今思うと、それは大宮が小山明子演じる緒方恭子に惚れる展開だったからだ。僕が観たいのは「大宮とヒロインのイチャイチャ」ではなく、「大宮と有田のイチャイチャ」だったからだ。



二人が配属された部隊も、かつていた部隊と同じく、暴力制裁が日常化し、様々な不正が横行していた。大宮は配属早々に問題を起こし、報復を心配した有田の配慮にょって、八木曹長(上野山功一)に当番兵として預けられる。


【カチハヤ】
 大宮が問題を起こす場所は、風呂と相場が決まっている。そもそもこの映画は大宮が裸になるシーンがわりと多いのだが、そこで注目すべきは、素っ裸でどんなに暴れても必ず何かで股間が隠れるよう、徹底的に練られたカメラワークである。海外の映画祭で数々の賞を取り、 “ グランプリの大映 “ と呼ばれた大映撮影部の驚異の技術力を垣間見ることができる。



曹長官舎には八木ともうひとり、岩波曹長(睦五郎)が同居していた。岩波は八木が当直でいない晩に女郎の染子(水谷良重)を呼び、若い大宮にわざとみせつける。


【カチハヤ】
 隣室での情事の声に悶える大宮。布団にくるまってゴロゴロ、かわいい。



岩波から花札賭博で大金を巻き上げた大宮。その金で買った酒を手土産に有田のもとを訪れると、恭子へのラブレターの代筆を頼む。


【カチハヤ】
 「なんて書くんだ?」と尋ねる有田に「 “ 愛してます “ って書いてください」と答える大宮。見ようによっては、ラブレターの代筆という口実で、大宮が有田に愛の告白をしているようにも見える。脚本の舟橋和郎、これは上手いやり方だ。



岩波が留守の夜、八木が染子を連れて現われる。二人は愛し合う中だったのだ。だが運悪く岩波が夜中に帰って来て大騒ぎに。大宮は当番兵をクビになり、岩波は八木に強い憎悪を抱くことになる。


【カチハヤ】
 曹長官舎にいる以上、大宮と有田が一緒にいるシーンがないので、もうひとつ面白くない。二人が一緒にいるからこその『 兵隊やくざ 』でしょうが。舟橋さん、バディもので二人がバラバラになったら魅力半減だよ。



中隊は八路軍討伐に出動。岩波はそこで捕えた老人を突き殺せと大宮ら初年兵に命じる。有田が人道的見地から反対意見を述べたことで処刑は中止されるが、多久島中隊長(須賀不二男)の指示で有田はリンチにかけられる。怒った大宮は、捕えられた老人と娘を逃がしたが、そのせいで中隊は八路軍の夜襲を受け、八木曹長は戦死してしまう。


【カチハヤ】
 劇中では、捕虜を逃したことと、八路軍の襲撃との関連性は特に描かれていないが、現実的に考えてそうなのだろうと思い、「そのせいで」と書いた。タイトルは忘れたが、ハリウッドの戦争映画で、子供を逃したらゲリラに連絡されて部隊が全滅寸前までやられるというのがあると聞いたことがあるので、ここもそういうことと解釈した。



八木曹長の死に疑問を持った有田は、調査に乗り出す。大宮は野戦病院へと転属してきた看護婦の緒方恭子と再会する。多久島中隊長は、隊員である恭子の弟の処分をちらつかせて彼女に体を要求する。駆けつけた大宮と有田は、中隊長をぶっ倒し、恭子を弟に会わせてやる。


【カチハヤ】
 襟にいくつ☆が付いていようと、キタねぇことをする奴を大宮と有田は許さないのだ!



岩波は大宮と有田を軍法会議にかけると脅すが、逆に有田は八木の遺体から取り出した弾丸が岩波の銃から発射されたものだという証拠を突きつけ、脅し返す。大宮が岩波を叩きのめすと、二人は奪った軍用トラックに緒方看護婦も乗せ、銃弾の雨をかいくぐりながら大脱走を決行する。まんまと逃げおおせると、二人は緒方看護婦に別れを告げ、どこへともなく走り去っていく。


【カチハヤ】
 前作のクライマックスがわりと静かに展開したのに対し、本作は派手で見栄えがする。ただ、銃をバンバン撃って、車でギュンギュン走って、というド定番の展開なので、何かしら見せる工夫が必要だった気がする。



【 まとめ】 前作が好きで「もう一度、大宮と有田に逢いたい!」と思って本作を鑑賞すると、いろいろともの足りないところがある。一番大きいのが大宮が当番兵になってから有田と離れてしまうということ。二人のやりとりが見たいのに。ただ、物理的に離れてしまったのなら、離れている時間に大宮は有田のことを、有田は大宮のことをどう思っているのかをそれぞれ見せることで、空間を隔てたイチャイチャを演出できるだろう。会えない時間が愛育てるのよ、って歌もあるくらいだしさ。あと、小山明子演じる緒方恭子をもっと生かして欲しかった。超絶美人なんだからもっと印象的なシーンを作れたはず。いっそのこと、恭子が有田に惚れてしまうという展開でも良かった。


監督 : 田中徳三
角川書店
発売日 : 2012-07-19




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2019年01月05日

【面白い音楽の紹介】 ピロカルピン 『 小人の世界 』







ひさしぶりにピロカルピンを聴いた。


といって別にかつてCDをよく買っていたとかそういうことではない。


数年前にYouTubeで偶然見つけて、それからPVを見たり、ちょっとカラオケで歌ってみたりしたくらいだ。


でも、その頃からすでに一度聴いただけでそれとわかるだけの図抜けた個性を持っていた。


僕がはじめに知った頃のピロカルピン4人編成のバンドだったと思うが、現在は中心メンバーであるギターボーカルの松木智恵子と、ギターの岡田慎二郎からなるユニットとして活動していて、他のパートはその都度サポートメンバーを入れているようだ。


ピロカルピンの特徴はなんといっても松木智恵子のボーカルと、彼女の書く歌詞だ。


伸びやか透明感がありながらどこか懐かしい感じのするボーカル(当時好きだった倉橋ヨエコにちょっと似ていた)。


それがポエジィで、寓話めいた世界観の歌詞と合わさると、まるで子供時分に暗闇で目を閉じ、布団の中で童話の語りきかせをしてもらっているような、安心とも不安ともつかない不思議な夢の世界を感じさせてくれる。


ちなみに数年前に僕がよく聴いていた『 未知への憧憬 』はこんな曲。







ルックスがイマイチ垢抜けないけど売れればいいなぁ、なんて思っていて、ブレイクしたという話を聞かぬまま数年が過ぎた


僕の生活からピロカルピンは完全に消えたはずだったのだが、なぜかつい先日、ふと「ピロカルピンでも聴こうかな……」と思いたち、YouTubeで探してみたところ、出会ったのがこの『 小人の世界 』だ。


メンバーはいつのまにか2人になっていたが、その独特の世界観は相変わらず、唯一無二であった。


インディーズからメジャー(僕がピロカルピンを知って、よく聴いていたのはこのへん)へ、そして彼らはその後、自主レーベルを立ち上げ、さらには2016年6月から10月までアルバム制作のクラウドファンディングを実施


クラウドファンディングは結果、達成率176%と大成功し、その資金で2017年アルバム『 ノームの世界 』を製作。


そのアルバム事実上のタイトル曲が、この『 小人の世界 』なのだ。



 なぜ “ 事実上 “ なのか。詳しくはこちらのインタビュー記事をどうぞ。

【 現実を見せることで生まれた “ 非現実の世界 “  ピロカルピン 】
(音楽ナタリー より)




印象として、以前は彼らの独特の個性が上手く噛み合っているものとそうでないものが混ざり合っていたが、今のほうが個性の提示の仕方が整理されたように感じられる。

はっきり言って、ずっと良い


YouTubeでしか聴いてなかった僕が、とうとうCDをポチッてしまった


幅広く受け入れられるかどうかはわからないけど、こういう独自の世界を見せてくれる人たちが頑張っているのを見ると、なんだか勇気が湧いてくる


ピロカルピン
SPACE SHOWER MUSIC
発売日 : 2017-05-09



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2018年12月30日

【映画の感想】 勝新×田村高廣の兵隊やくざ 『 兵隊やくざ 』







評価:★★★★☆ 二人のイチャイチャが最高!

(※ 評価の見方 …… ★1 最低、★2 いまいち、★3 満足、★4傑作、★5 最高)



12月27日から始まった、ラピュタ阿佐ヶ谷のモーニングショー企画『 勝新×田村高廣の兵隊やくざ 』




この企画は、毎日10時30分からの上映12月31日と1月1日は休館)で一週間ごとに上映作品が入れ替わるという構成になっている。


第一週目に上映されるのは、もちろん記念すべきシリーズ第一作目である『 兵隊やくざ 』


たまたま仕事が休みだったので初日である12月27日(木)に鑑賞することができた。


例によって記憶を頼りにおおまかなストーリーを書きつつ、その都度感想を添えていくので、ネタバレが嫌な人はご遠慮くださいませ。





『 兵隊やくざ 』
 製作総指揮:永田雅一
 監督:増村保造
 脚本:菊島隆三
 原作:有馬頼義 『 貴三郎一代 』
( Wikipedia より )




第二次世界大戦中の1943年(昭和18年)、ソ連邦との国境に近い満州の「孫呉の丘」には、4万の兵力を誇る関東軍が駐屯していた。インテリだが幹部候補試験を意図的に落第して “ ぐうたら “ を決め込んでいた有田上等兵(田村高廣)は、入隊してきた、浪花節語りくずれで元やくざの用心棒である大宮貴三郎(勝新太郎)の指導係に任命されてしまう。


【カチハヤ】
 登場シーンで大宮は上官に殴られる。が、彼はびくともせず、逆に殴った上官の手がイカれてしまう。これは脚本の菊島隆三が、大宮のキャラクターを観客にわかってもらうために作ったものだと思うが、さすがは黒澤組で橋本忍や小国英雄とともにエース級の仕事を任されていた脚本家だ。前述の三人の中でも『 用心棒 』や『 隠し砦の三悪人 』などを手がけ、最もエンターテイメント色の強い脚本家である菊島隆三は、とにかくキャラクターの立て方が上手い。最初に “ 力が強いだけの腕白小僧 “ と思われていた大宮が、徐々にその印象を変えていく展開の妙が、ここからはじまる。(それと有田とのラブストーリーもね)



部隊では鉄拳制裁が常態化していた。大宮を含め、初年兵たちは毎日のように上官から暴力を振るわれるが、有田だけは大宮を殴るどころか、怒鳴りつけることすらしない。
大宮は風呂場で砲兵隊員十数人を大乱闘の末にやっつける。砲兵隊の幹部候補生、黒金伍長(北城寿太郎)に目をつけられた大宮は、難癖をつけられ、制裁という名目で殴られる。しかし、有田がインテリらしいやり方で黒金の難癖にさらなる難癖をつけ、大宮に黒金の指を折らせるなどの報復をさせた上、黒金には泣き寝入りさせる。


【カチハヤ】
 「上等兵殿、やってもいいですか」「ああ、静かにやれ」「骨は?」「折ってもいいが、殺すなよ」 こうして大宮は有田を慕うようになるのであった。



しばらくして、演習の場で、軍曹に昇進していた黒金に再開した有田は報復で暴行を受ける。大宮は有田の敵を討とうとするが、多勢に無勢で苦戦。駆けつけた歩兵隊の古参兵の協力を得て、大宮は一対一の勝負で黒金を叩きのめす。
結果、大宮たちの隊は外出禁止の罰を食らうが、大宮は兵舎を脱走して将校専用の女郎屋に乗り込み、彼を気に入ってくれた音丸(淡路恵子)と遊ぶ。


【カチハヤ】
 大宮が公用と偽って外出したと聞いて「案外知恵がありますな」と有田。徐々に大宮が有田とは違うタイプの知恵を持っていることが明らかになっていく。



有田は大宮の処分の軽減を願い出る。上官の中沢准尉(内田朝雄)は、暴力の嫌いな有田に自ら大宮に制裁を加えるよう命ずる。有田は一発しか殴れないが、これでは有田が罰せられると考えた大宮はレンガで自分の顔を殴る。


【カチハヤ】
 無言で自分の顔を殴る大宮。有田にワケを尋ねられても浪花節を口ずさむだけ。上手い脚本家は、こういうところで説明を最小限に抑える。当たり前のことだけど、わかりずらくならない丁度いい加減を知っているあたりはさすがだなと思う。



戦況が悪化し、有田の希望であった満期除隊の可能性が潰える。
同じ隊の仲間が炊事兵から受けた暴行を苦に脱走、荒野で自殺してしまう。隊は演習中の事故死と報告するが、嘘を見抜いた憲兵(成田三樹夫)は「たるんどるな」となじる。仲間の死に責任を感じていた大宮は憲兵に殴りかかろうとするが、有田が羽交い締めにして止める。
沈んでいる二人を慰めようと音丸は “ へそ酒 “ を提案する。へそに酒を注いでそれを舐めるのだ。「どんな将校にだってさせないけど、あんたたちならいいわ」 大宮は炊事兵への報復を思い立ち、殴り込みをかける。


【カチハヤ】
 戦場という地獄から逃れる希望の潰えた三人が、へそ酒という一時の快楽に興じる。馬鹿らしくて、おかしくて、悲しい遊び。と、同時にシナリオ的には、音丸が二人と特別な関係を築いているということをここで提示している。男だらけの物語にあって、音丸が良いアクセントになっている。



炊事場で大乱闘を繰り広げる大宮。炊事班長の石上軍曹(早川雄三)は、炊事場で問題を起こすと自分の地位が危ういと感じ、その場は穏便に収め、後日、大宮を呼び出して大勢で襲わせる。だが、有田が石上に食料横流しの事実を突きつけ、やめさせるよう迫る。ならばと石上は大宮との一騎打ちを持ちかける。大宮は石上を叩きのめし、助けてくれた有田に礼を言う。「今度は自分が上等兵殿を助けます。そのうち、きっと、助けるときが来ます」
さらなる戦況の悪化から一個大隊が南方へ送られることになり、大宮もそれに選ばれる。大宮は、わざと有田を殴って罰則を受けることで営倉入りし、南方行きを免れる。大宮は有田に脱走を持ちかける。


【カチハヤ】
 「計画的に俺を殴ったな」「上等兵殿と離れたくなかったんです」 大宮が馬鹿じゃないのはわかった。が、それ以上にお前ら二人の関係はなんなのさ。



本大隊全体が激戦地へと転進することとなった。汽車での移動中、大宮と有田はこっそり車内を移動。機関車に移り、兵隊を乗せた客車を切り離す。客車を切り離した機関車は、有田と大宮を乗せて満州の地をどこまでもどこまでも走り抜けていく。


【カチハヤ】
 脱走する二人に、どこへ行くこともできない音丸が言う「ご成功、お祈りしています」がせつない。悲しみを共有していたはずの三人が、二人と一人になる。大宮と有田が機関車へと向う途中、偶然、成田三樹夫演じる憲兵と鉢合わせし、ちょうどよかったとばかりに大宮がぶん殴る。まだ若手だった成田三樹夫がちょい役で出ているわけだが、ひと目で「あっ、成田三樹夫だ」とわかるのは、さすがの面構えといったところ。



【 まとめ 】 とにかく大宮と有田のコンビがすごい。この二人にまた逢いたい!と映画館に足を運ばせる魅力に溢れている。クライマックスの脱走シーンはそれほど盛り上がりがあるわけではないが、バディものとしては、観客にメインの二人を好きになって貰えればそれで十分だろう。脚本の菊島隆三は、構成を最も重視していたという。本作は、いわゆるハイコンセプトなエンターテイメント作品を作る際のお手本のような構成で、お見事というほかない。


監督 : 増村保造
角川書店
発売日 : 2012-07-19



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