2017年08月16日

【映画の感想】『 ジョン・マカフィー 危険な大物 』




評価:★★★☆☆ これぞアメリカ的成功者!


資本主義とは一種のゲームに過ぎない。

それは金という得点を最も稼いだ者が勝利者となるゲームであるが、他のゲームと違うのは、人々がこのゲームの勝利者を人間的に優れていると勘違いし易いということだ。

僕はサッカーファンだが、マラドーナが人間的に優れているというサッカーファンには未だに会ったことがない。

ウサイン・ボルトのタイムと彼の人間性には何の関係もない。

だが、アメリカ人はそうは思わない。

彼らにとってはアメリカンドリームの体現者=神に選ばれし者なのかもしれない。


ジョン・マカフィーは神に選ばれた。

少なくともウィルス対策ソフトのパイオニアとして初期IT業界を代表するひとりだった頃は。

マカフィーを手放してからの彼を知る者は、日本ではあまりいない。

本作はジョン・マカフィーに迫ったドキュメンタリー映画だが、はっきりいってITの頃の話はどうでもいい。

彼はカリブ海の小国ベリーズに自分の王国を築いていた。

美しい海を望む広大な土地に大きな屋敷、何人もの愛人に、銃で武装した警備兵。

愛人いわく「セックスは一度もしていない」そうで、彼の趣味は彼女らの排泄物を食べることだったという。

地元には多額の援助をしていたが、それは公園や図書館を作るのではなく、警察への銃やスタンガンの寄付という形で行われ、そのため地元警察は彼の奔放な行動に見て見ぬふりをしていたという。

貧しい小国に現れた大金持ちのアメリカ人に反感を持つ者も少なくなく、ギャングに命を狙われたこともあったが、そのギャングも数日後には彼にボディーガードとして雇われた。

地元民の中には金に転ばない者もいた。

警察にジョンの横暴を訴え、聞き入れられないと見るや自ら実力行使に出たひとりの男は、後に死体で発見された。

ジョンはベリーズ当局の逮捕を逃れるため逃走、グアテマラに不法入国して亡命を申請するも認められず逮捕されるが、ベリーズに引き渡されることはなく、アメリカに送還されている。

そして、カリスマ経営者としてビジネスの世界に返り咲いたかと思いきや、2016年、リバタリアン党から大統領選挙に出馬し、予備選挙で敗退。


ハリウッドにはスキャンダルのアドバイザーがいるという話を聞いたことがある。

スキャンダルをもみ消したりリカバリーするアドバイザーじゃない。

話題に事欠いているスターにスキャンダルを起こしてその情報をパパラッチにリークするのを助言するアドバイザーだ。

良い話題でも悪い話題でも人々の口の端にのるのが重要で、話題にならないのが最悪なのだ。

きっとそのアドバイザーは何の問題も起こさない真面目なスターにいうだろう。

「アメリカで成功したければ、ジョン・マカフィーを見習え」と。



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posted by カチハヤ at 23:06| Comment(0) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月10日

【面白いドキュメンタリーの紹介】『 イカロス 』




評価:★★★★☆ Netflixの可能性を見た!


今回紹介するのは Netflix のオリジナルドキュメンタリー『 イカロス 』。

最初は【映画の感想】として書こうかと思ったが、劇場公開されていない作品なので、映画ではなくドキュメンタリーとしてカテゴライズすることにした。

題材は “ ドーピング ” 。


アメリカ人のアマチュア自転車選手で映画監督のブライアン・フォーゲルは、スポーツ界におけるドーピング検査の信頼性に疑問を持ち、アマチュア界で最も過酷な自転車レースにドーピングを行って出場することを考える。
果たしてブライアンのドーピングはバレるのか!? という感じで番組は始まるのだが、事態は国家を巻き込んだとんでもないスケールへと拡大していく……。



やはりドキュメンタリーの面白いところは、製作者ですらどう展開していくのかわからないところだ。

本作はまさにそういう作品だ。

個人の思いつきで始まった企画が、皆さんご存知、ロシアの国家ぐるみのドーピングスキャンダルへと発展していく。

「プーチンに殺される」、「ロシアを脱出したい」、「証人保護プログラムを……」etc. 冒頭の展開からは思いもよらない事態、まるでスパイ映画だ。

そのリアルタイムの進行を監督自らが当事者となって捉えた映像によって、緊迫感そのままに伝わってくる。

ハリウッドの娯楽映画もいいが、アメリカの真骨頂はこういうドキュメンタリーにこそあると僕は思っている。

以前、『 松嶋×町山 未公開映画を観るTV 』というテレビ番組があって、日本未公開のアメリカのドキュメンタリー映画をたくさん紹介していたが、どれもとてつもなく興味深くスリリングだったのを思い出す。

皮肉な言い方をすれば、それだけアメリカは題材に事欠かない国なのだ。


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2017年08月06日

【映画の感想】 松方弘樹 主演 『 修羅の群れ 』




監督 : 山下耕作
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
発売日 : 2016-06-08
評価:★★☆☆☆ 松方版『 ジョン・ウィック 』だが……

本作は松方弘樹版『 ジョン・ウィック 』である。

とにかく登場人物たちの松方への惚れ込みようがすごい。

『 ジョン・ウィック 』の登場人物たちがジョン・ウィックをリスペクトしているように、本作の登場人物たちも皆、松方が大好きである。

実際、出演者たちは松方の男気に惚れて出演を快諾したといわれている。

「鶴田のおっさん」(松方談)こと鶴田浩二をはじめ、若山富三郎、菅原文太、北大路欣也といった往年の東映スターはもちろんのこと、北島三郎まで出ている。

監督は、三島由紀夫が「仁侠映画の極北」と絶賛した『 博打打ち 総長賭博 』の山下耕作。

これだけの座組だが、残念ながら作品の質は往年の東映ヤクザ映画には及ばない。

脚本の出来もどうかと思うが、一番の問題は熱がないこと。

往年の東映ヤクザ映画も、脚本上・演出上のおかしな点はあったが、作品の持っている熱や勢いで全てが味に昇華されていた。

もしかしたら本作の方が整合性という意味では上かもしれないが、魅力は失せてしまっている。

時代が違うのだろうか。

いや、それだけとも思えない。

やはり、脚本に問題があるように思う。

より正確に言うと松方演じる主人公を取り巻く環境だ。

前述したとおり、本作の松方は登場人物たちからリスペクトされまくっている。

それじゃあダメだ。

僕の好きな松方は、不屈の男なのだ。

周りは敵だらけで憎まれまくっているときにこそ輝くのが松方なのだ。

そういう脚本でなら、時代など関係なく、松方の不屈の闘志が作品に熱を帯びさせるに違いない。


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